2008 年 12 巻 1 号 p. 35-43
本研究の目的は,地域在住高齢者の運動習慣の有無と身体・認知・心理機能との関連について,前期高齢者と後期高齢者別に検討することである.方法は,前期高齢者96人および後期高齢者85人を対象に,評価した身体・認知・心理機能について,年齢を調整した共分散分析で比較した.その結果,前期高齢者では運動習慣あり群がなし群に比べ,下肢筋力や歩行能力などの身体機能,知的機能や注意機能などの認知機能が有意に良好な値を示した.握力および心理機能には有意差は認められなかった.一方,後期高齢者では身体機能や認知機能のみならず,心理機能にも有意差が認められ,運動習慣あり群がなし群より有意に高値を示した.これらの知見から,高齢者が運動を定期的に行うことの効果は後期高齢者で著明に認められ,下肢筋力や歩行能力などの身体機能,および注意機能の老化抑制効果が期待でき,転倒予防につながる可能性が示唆された.さらには,認知症の発現を抑制する効果や精神的健康状態を高める作用も期待できることから,後期高齢者の効果的な介護予防の手段として期待される.