2005 年 9 巻 1 号 p. 20-30
中国の北京市と地方都市である黒竜江省の牡丹江市における介護を要する高齢者の家族の介護負担感を測定し,両都市の要介護高齢者や介護者の状況,ソーシャルサポート資源と介護負担感との関連を明らかにすることを目的とした.対象は退院後も介護が必要と看護師が判断した60歳以上の高齢者の主介護者162人で,質問紙を用いた聞き取り面接調査を行った.
その結果,①北京市,牡丹江市ともに,要介護高齢者のADLが低いほど,また介護時間が長いほど,介護者の健康状態自己評価が低いほど,介護負担感が強かった.②北京市では,介護者が高齢であるほど介護負担感が強く,職業のない介護者はある介護者よりも,また治療を要する疾患がある介護者はない介護者よりも,介護負担感が強かった.③牡丹江市では相談相手がいない介護者はいる介護者よりも介護負担感が強かった.今後中国では全国的に保健・医療・福祉サービスの充実を図ると同時に,地方都市と大都市間の格差の是正が急務であることが示唆された.