日本ヒューマンケア科学会誌
Online ISSN : 2436-0309
Print ISSN : 1882-6962
研究報告
新聞販売員の認知症サポーターが認知症を疑わせる高齢者との関わりの中で遭遇する「困惑した体験」の実態と支援の方向性
宮野 公惠大山 一志柏葉 英美岸田 るみ齋藤 史彦成松 玉委藤井 博英
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2021 年 14 巻 1 号 p. 16-24

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抄録

 認知症サポーター事業に参画するA新聞社の新聞販売店78店舗で働く新聞販売員733名を対象に自記式質問紙調査を実施した。回答が得られた553名(回収率75.4%)のうち、認知症サポーターは164名(29.7%)であった。その中で、業務中に認知症を疑わせる高齢者と関わって遭遇した「困惑した体験」について自由記述のあった42名(7.6%)の内容分析を行った。その結果、新聞販売員の認知症サポーターが、認知症を疑わせる高齢者との関わりの中で遭遇した「困惑した体験」として、【契約の事実を忘れられる】【物の置き場がわからなくなっている場面に遭遇する】【やっている・言っている側から忘れられる】【自分の家がわからずさ迷っている姿に出遭う】【受け取り・支払いに伴う誤った思い込みをされる】【脈絡がなく理解できない話をされる】【人や物の判別がつかない場面に遭遇する】【勘定ができない場面に遭遇する】の8カテゴリが導出された。

 新聞販売員の認知症サポーターが、認知症を疑わせる高齢者と関わったときの困惑を緩和する支援の方向性として、認知症サポーター養成講座の中で、新聞販売員が体験する可能性の高い8カテゴリの「現象」と、「知識」を有機的に結びつける教育内容と方法を構築し、実行性の高い学習をすることで、対応にゆとりができると考えられた。更に、新聞販売員の認知症サポーターに期待される役割として、新聞販売が地域に密着して戸別に巡回するという業務の特性を活かすことで、高齢者の軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment:以後MCIと略す)の段階での早期発見と、行動・心理症状(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia:以後BPSDと略す)における事故・トラブルを未然に回避できることが示唆された。

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