日本ヒューマンケア科学会誌
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総説
「生活習慣病・活性酸素・栄養」シリーズ(2)
高血圧の発症機序と予防、活性酸素との関わり
嵯峨井 勝
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2011 年 4 巻 1 号 p. 9-18

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抄録

 高血圧は食塩の摂取過多で起こることはよく知られている。これは高濃度ナトリウムにより血液量が増えるので血圧が上ると考えられている。しかし最近、高血圧は血管が酸化ストレスを受けることによるとされてきた。すなわち、血管内皮細胞表面にあるNADPH-オキシダーゼが高濃度ナトリウムで活性化されスーパーオキシド(O2-) を産生し、このO2-が血管内皮細胞で作られ血管弛緩作用を持つ一酸化窒素 (NO) と反応してNOを消すとともに、反応で生じた強力な活性酸素(ONOO-) 類が血管内皮細胞を傷害し、NO合成阻害など内皮細胞機能低下を招くことによるとされる。さらに、レニン-アンジオテンシン系のアンジオテンシンII、アルドステロン、グルコース、インスリンなどもNADPH-オキシダーゼを活性化し、O2-を産生して高血圧を招くというメカニズムが判明してきた。

 こうした事実から、ビタミンC,ビタミンEなどの抗酸化ビタミンや野菜・果物中の抗酸化物質が高血圧予防に有効であることが判明してきた。また、カリウム、カルシウム、マグネシウムもその抗酸化作用等により降圧作用を示す。また、DASH食の基本である動物性脂肪を控えることが降圧に有効な理由も飽和脂肪酸が樹状細胞のTLR4に結合することで炎症を起こし、それに由来する活性酸素が血圧上昇を招く。一方、魚の脂のn-3系脂肪酸は飽和脂肪酸のTLR4への結合を阻害して炎症を抑えるために、高血圧予防に良いとされている。その他、高血圧予防に良い生活習慣、食生活および薬で血圧を下げると老後の自立能力が低下することなどを紹介する。

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