日本助産学会誌
Online ISSN : 1882-4307
Print ISSN : 0917-6357
ISSN-L : 0917-6357
原著
異文化圏からの人々の出産に対する助産ケアの現状
-文化を考慮したケアの実現に向けて-
藤原 ゆかり
著者情報
ジャーナル フリー

2006 年 20 巻 1 号 p. 1_48-1_59

詳細
抄録

目 的
近年,増加傾向にある異文化圏からの人々の出産に対して,出産は文化的な要素を強く反映する事象であることを踏まえ,文化を考慮したケアを模索するため,今回は臨床でのケアの現状と課題を明らかにすることを目的とした。
対象と方法
研究デザインは質的記述的研究である。方法は研究者が作成したインタビューガイドを用いた半構成的面接法によりデータを収集し,内容分析を行った。調査対象は都内の産婦人科病棟で異文化圏からの人々のケア経験のある臨床助産師16名である。
結 果
助産師は異文化圏からの人々に対して,気持ちがわからないその場限りの関係で,お互いにストレスがたまる,また,ストレートな表現や意外な反応・自分の意見を貫く態度に戸惑うとしながらも共通の言語だけがケアに重要ではない,相手を知ろうとする態度が関係性を変えることも認知していた。さらに特殊なバックグラウンドや病院のシステム・役割の違いという社会的側面も認知に影響していた。出産にかかわる文化については出産に対する認識の違いや助産師の役割の違いによる戸惑い,希望への配慮とルールを越える慣習への対処の難しさを感じながら,今後のケアについてはよいお産をしてほしいと願い,多職種との連携やサポートシステム構築の必要性も認知し,ケアの向上を目指していた。
結 論
臨床の助産師は,コミュニケーションの難しさや出産文化の違いを認知しながらも異文化圏からの人々を尊重しようと努力し,よいお産をめざしてケアを提供していることが明らかになった。しかし,多職種との連携やサポートシステム構築が,ケアの向上には不可欠であることも示唆された。

著者関連情報
© 2006 日本助産学会
前の記事 次の記事
feedback
Top