日本助産学会誌
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タイにおけるエイズ患者の現状と支援活動の課題
─支援活動の実際と文献レビューより─
水野 真希
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2007 年 21 巻 1 号 p. 1_75-1_82

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抄録

目 的
 現在,エイズは世界的に流行をみせており,アジアでも蔓延し,その広がりを阻止するための対応は急務である。今回,エイズ感染が著しく蔓延している国の1つであるタイに着目し,エイズ患者の実態を明らかにし,エイズ患者を取り巻く環境と支援活動の現状と課題について探ることを目的とした。
対象と方法
 バンコク北西に位置する人口約7万人のロップリー町にあるエイズ患者の支援施設であるワット・プラパート・ナンプーに7日間滞在し,支援の実際と観察をとおして研究者が記録したフィールドノート及び現地の2名の職員と3名のボランテイアから同意を得て録音したインタビュー内容と文献レビューやインターネットからの統計資料により分析を試みた。
結 果
 タイにおける急激なエイズ拡大の要因として,環境・エイズに関する知識不足・文化風習が相互に大きく関与していた。エイズは今世紀の流行病というだけではなく,生活苦→売春→エイズ感染→生活苦という悪循環が起こっていることが示唆された。また,支援者にとって,常にGIVEの意味をわきまえ,独自の人間として患者をありのままに受け止め,尊重することで,各患者にとって最良のケアを提供することができ,同時に,患者からも同じ癒しを受け取ることができるということが示唆された。
結 論
 今回の検討からエイズ感染拡大の要因には,1,環境因子2,エイズに関する知識不足3,文化風習の3つの要因が相互に大きく関与しており,単にHIV早期発見やエイズ治療薬の開発だけでなく,人々が自分の意思で保健行動の変容が可能になるよう,個人・家族・地域社会と密接に関わり,その人の生活環境を把握するとともに,必要な知識を提供し援助,支援することが重要である。また,ボランテイアやNGOによる保健活動に加え,専門家によるエイズに関する正しい知識と技術の提供を行っていく必要がある。

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© 2007 日本助産学会
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