日本助産学会誌
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助産師の不妊に関する意識と不妊治療の許容度
青柳 優子
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2010 年 24 巻 1 号 p. 84-95

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抄録

目 的
 不妊治療後の産婦のケアを行う助産師の不妊に関する意識と不妊治療の許容度を明らかにすることを目的とした。
対象と方法
 全国の不妊治療から分娩までのケアを行う医療施設において,不妊治療後の産婦のケアを行う臨床経験1年以上の助産師を対象とし,自己記入式質問紙調査を実施した。測定用具は,作成した質問紙「不妊に関する意識」,「不妊治療の許容度」及び「背景」である。因子分析を行い「不妊に関する意識(18項目)」から2因子〔子を産まない人生の受容〕〔子をもつこと,治療を奨励〕を抽出した。クロンバックα係数は2因子共.665であった。「不妊治療の許容度(20項目)」からは4因子〔一般に第三者の関わる治療を承認〕〔自分は第三者の関わる治療を受容〕〔自分は配偶者間の治療を受容〕〔一般に配偶者間の治療を承認〕を抽出した。クロンバックα係数は.858~.947であった。有効回答449部を分析の対象とした。
結 果
 助産師の「不妊に関する意識」では,2因子のうち〔子をもつこと,治療を奨励〕よりも〔子を産まない人生の受容〕の得点が有意に高かった(p<.01)。この意識は不妊看護の経験も自己の不妊経験もない助産師により強く見られた。また「不妊治療の許容度」は,すべての因子間の得点において有意差があった(p<.05)。助産師は第三者の関わる治療よりも配偶者間の治療を許容し,配偶者間においては自然な生殖により近い不妊治療を許容する傾向が見られた。また,〔子をもつこと,治療を奨励〕する助産師は配偶者間の治療を許容していた。
結 論
 助産師は,第三者の関わる不妊治療に対して自分が利用するか否かだけでなく,一般論としても許容度が低い点で国民や不妊の当事者と異なっていた。また助産師の背景の内,不妊看護の経験及び自己の不妊経験の有無によって,子を産まない人生を受容する意識に差があった。

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© 2010 日本助産学会
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