日本助産学会誌
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原著
“女性を中心としたケア—妊娠期尺度”の開発とその妥当性と信頼性の検討
飯田 真理子
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2010 年 24 巻 2 号 p. 284-293

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抄録

目 的
 本研究の目的は,医療者が妊娠中の女性に対して行う女性を中心としたケア(Women-Centered Care: WCC)を,ケアの受け手である女性がどのように認識したかを測定する女性を中心としたケア—妊娠期尺度(WCC-pregnancy尺度:WCC-preg尺度)を作成し,その妥当性と信頼性を検討することである。
対象と方法
 本研究の対象者は研究協力施設にて出産をし,入院中の女性である。
 WCC-preg尺度は文献検討とインタビューを基に作成し,もとは60項目から構成された尺度である。回答は5段階リッカート尺度であり,得点が高いほどWCCの認識が高いことを示す。妥当性の検討のために用いた測定用具は,母親の愛着質問紙(MAQ)と出産時のコントロール感尺度(LAS)であり,妊婦健診時の満足度に関しては10段階で評価してもらった。
 研究の第1段階は妥当性,内的整合性の検討を行い,第2段階では安定性を検討した。第1段階では質問紙を13施設591名に配布し,回収できた500名のうち482名を分析対象とした。第2段階では1施設100名に配布し,1次調査と2次調査の両方の回答が得られた60名を分析対象とした。
結 果
 表面妥当性の検討によりWCC-preg尺度は50項目となった。そして因子分析を行った結果,次の6つの要素:【励まし】【尊重】【医療者への信用】【良好な相互作用】【意思決定への支援】【負担が少ない】が抽出され,構成概念妥当性は支持された。基準関連妥当性の検討では,WCC-preg尺度とMAQは弱い(r=0.22, p=0.00)関連があり,LASとは中程度(r=0.48, p=0.00)関連があり,妊婦健診時の満足度とは強い(r=0.79, p=0.00)関連があるという結果であった。これらのことから基準関連妥当性は確認できた。
 内的整合性に関しては,クロンバックのα係数は0.98であり,WCC-preg尺度は高い内的整合性を示した。安定性に関しては1次調査と2次調査の相関係数は0.55であり,安定性にやや課題が残った。
結 論
 本研究ではWCC-preg尺度を開発し,その妥当性と信頼性の検討を行った。その結果,尺度の妥当性は確認できた。信頼性に関しては,安定性に課題が残されたものの,高い内的整合性があることが確認できた。

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© 2010 日本助産学会
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