日本助産学会誌
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原著
島外出産をする女性へ助産師が行うケアの認識と実践
山本 由香
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2010 年 24 巻 2 号 p. 294-306

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抄録

目 的
 島外出産をする女性へのケアを助産師がどのように認識し,実践しているのか明らかにする。
対象と方法
 エスノグラフィー的アプローチを用いた。主要情報提供者6名:島内の出産施設で働く助産師,二次的情報提供者38名:島外出産をする女性とその家族,島内の病院に勤務する産科医師,保健所に勤務する保健師,島外出産の経験をもつ育児中の女性,本土の出産病院に勤務する助産師ならびに島外出産をする女性の多くが利用する宿泊施設に従事するスタッフに対して,参加観察やインタビューを実施した。
結 果
 島外出産をする女性へ助産師が行うケアの認識と実践を分析した結果,本土で過ごす期間を視野に入れて行う産前のケアと本土の出産状況と切り離された産後のケアが見出された。産前のケアでは,島外出産をする女性が余儀なく本土で独居生活をすることにより分娩への不安や恐怖が増幅しやすい状況になることや,生活環境の変化により栄養管理などが困難になることを助産師は認識していた。その中で,産む力を発揮できるような女性の心身の環境を整えるケアに努めていることが見出された。また,産後のケアでは,妊娠から産褥までの連続性を絶たざるを得ない現状の中で,助産師には島外出産をした女性の島に戻ってきてからのケアが,島内出産をした女性のケアに比べ充実していないという認識があった。しかし,充実していない中にもやりくりして,女性との結びつきを得ていることが見出された。
結 論
 島本土間の生活環境を移動する母子が,妊娠期から育児期まで,その時期を安全に安心して過ごせるように,ケアの調整が必要なものとして次の3点が見出された。
1 )分娩への不安や恐怖が増幅しやすい状況にあることを認識したケア
2 )本土生活という生活環境の変化に対応するケア
3 )地域に戻ってきた褥婦に対して専門家の手の離れたところで育児が開始されることを認識したケア

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© 2010 日本助産学会
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