日本助産学会誌
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原著
周産期喪失を経験した家族を支えるグリーフケア:小冊子と天使キットの評価
堀内 成子石井 慶子太田 尚子蛭田 明子堀内 祥子有森 直子
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2011 年 25 巻 1 号 p. 13-26

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抄録

目 的
 周産期喪失を経験した母親・家族に対して,小冊子「悲しみのそばで」および,「天使キット」(別れの身支度,記念品等)を提供し,その試用経験から実用性を評価する。
対象・方法
 探索的記述研究デザインであり,これは試作開発した教材の実用化に至るトランスレーショナル研究のプロセスである。対象は,東京都近郊の5箇所の病院において,2006年5月から2008年5月までの間に,周産期喪失(流産・子宮内胎児死亡・死産・新生児死亡等)を経験した母親である。小冊子および天使キットを使用した結果を,自己記入式質問紙を用いて評価してもらう。評価は記述統計および自由記載に関する内容分析をおこなった。
結 果
 死産を経験した母親84名が試用し,質問紙は43名から返送された。
 小冊子に関しては,42名(97.7%)が「とても参考になった」「参考になった」と回答し,天使キットに関しては,全例が感謝を表明し,好意的な評価であった。
 小冊子に対する感想の内容は5カテゴリーに分類できた。1)〈受け入れられて,心が楽になった>,2)〈何が自分に起こっているか理解できた〉,3)〈ひとりじゃない,つながっている感覚〉,4)〈自分のペースでいい,時間がかかってもいいという保障〉,5)〈人それぞれに違った悲しみの表現があると知る〉に分かれた。天使キットについては,5カテゴリーの評価内容が抽出された。1)〈数少ない思い出の品となった〉,2)〈時機を得た支援だった〉,3)〈限られた時間の中で,遺品を残すことの後押しになった〉,4)〈大切な赤ちゃんとして扱ってもらえた〉,5)〈医療者とコミュニケーションがとりやすかった〉。
結 論
 小冊子および天使キットは,試用した母親から良好な評価を得た。小冊子は,喪失後の悲しみについて認知・情動の理解を助け,天使キットは認知・情動・および行動を助けた。この道具は,周産期喪失による悲嘆作業を進める上での道標として実用化が望まれる。

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© 2011 日本助産学会
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