2012 年 26 巻 1 号 p. 4-15
目 的
ミャンマー農村部において,参加型アプローチで育成された,地域母子保健向上を目指す女性保健ボランティアグループ(Women's Health Voluntary Group=WVG)メンバーに生じた変化を明らかにする。
対象と方法
WVGが育成されたミャンマーの2つの農村において,WVG21名,関係者8名,WVGの家族20名,村民25名の計74名に半構成的面接を行った。得られたデータを日本語に翻訳し,質的帰納的に分析した。
結 果
WVGの変化を分析した結果,10のカテゴリと28のサブカテゴリが抽出された。WVGの変化は,【日常に活用可能な知識の獲得による行動の変化】を核とする,【知識の獲得から派生した意識の広がり】へと発展していた。変化の過程においては,【村落社会の機能活用】により変化をより合理的に推し進めていた。この変化の過程に直接影響を与えたのは,【家族の支援】と【カネの運用】,そして【モノの存在】であった。これら3点が変化の核となる“行動の変化”の脇を固めることで,はじめてその後の“意識の広がり”へと変化が発展していた。変化自体を支える基盤は,WVGの【参加への動機付け】と【宗教と文化に基づく思想】であった。変化の副次的効果として,【地域が醸し出す感謝の念】という地域の変化と【基礎保健職員との連携】という保健専門職の変化が現れていた。
結 論
ミャンマー農村部において女性が保健ボランティアとなり体験した変化は,何もわからない状態から健康に関する日常に活用可能な知識を経て,その伝達者としての役割を果たすことから生じる,行動の変化と意識の広がりであった。