日本助産学会誌
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初産婦の夫婦関係の評価と育児満足感を構成する諸要因の関係に関する研究
—育児初期の核家族に焦点を当てて—
佐藤 小織
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2012 年 26 巻 2 号 p. 222-231

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抄録

目 的
 本研究は,育児初期の初産婦における夫婦関係の評価の高群と低群では,育児満足感を構成する諸要因の得点に違いがあるかどうかを明らかにすることを目的とした。
対象と方法
 対象は,都内の総合病院で出産した初産婦であり,産後2~3か月の乳児を育児中の者100名とした。調査内容は,(1)デモグラフィックデータ(年齢,夜間の睡眠時間,EPDS他),(2)夫婦関係の評価を測定する尺度(Marital Love Scale),(3)育児満足感を構成する諸要因を測定する尺度と質問紙[疲労(自覚症状しらべ),自己効力感(一般性セルフ・エフィカシー尺度),育児の自己効力感(産褥期育児生活肯定感尺度の第1因子),夫のソーシャルサポートの評価を行う質問紙,母親役割受容(母性意識尺度),親の養育態度の評価(PBI)]であった。
結 果
 有効回答者93名(93%)の結果を統計的に分析した。夫婦関係の評価得点の高群は低群と比較して,睡眠時間は有意に短時間であったが,その他の背景はほぼ同じであった。夫婦関係の評価得点の高群は低群に比べて,育児満足感を構成する6要因のうち,夫のソーシャルサポートに対する評価得点(精神的サポート;p=.000,情報的サポート;t=3.81,p=.000,道具的サポート;p=.006),自己効力感の得点(p=.040),母親役割受容の積極的・肯定的受容得点(p=.004)が有意に高かった。
結 論
 夫婦関係の評価という視点で,育児期の母親の育児満足感を見ると,母親が夫婦関係を高く評価していると,育児に対する肯定感情が高いと考えられる。そのため看護者は,具体的な育児方法を指導するだけではなく,母親がこれまで培ってきた対処能力とともに,夫婦の関係性への関心を持つこと,夫婦のコミュニケーションの重要性を育児支援のなかで伝えていくことが必要であると考えられる。

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© 2012 日本助産学会
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