日本助産学会誌
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院内助産開設に関わる要素
—院内助産モデルケースの聞き取り調査から—
渡邊 めぐみ林 猪都子乾 つぶら
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2012 年 26 巻 2 号 p. 256-263

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抄録

目 的
 国内で先駆的に院内助産を行っている5ヵ所をモデルケースとし,院内助産開設に関わる要素を明らかにする。
対象と方法
 院内助産を開設している総合病院5ヵ所の助産師各1名を対象にした。データは,院内助産の開設準備に焦点化し,半構成的面接調査にて収集した。分析は,面接内容を録音し逐語録化して,KJ法の手法を用いて統合し,各カテゴリーの関連を時系列で検討し図式化した。
結 果
 逐語録より抽出されたデータは,グループ編成により,最終的に【院内助産開設の背景】【ハード面のシステムづくり】【助産師のスキルアップ】【人員配置と連携】に統合された。この4つの要素を構造図として表すと,助産師が進んでいく院内助産開設への道のりは,【院内助産開設の背景】で示される上り坂と,その他3要素【ハード面のシステムづくり】【助産師のスキルアップ】【人員配置と連携】で示される平坦な道のりの2段階で構成された。院内助産開設に向けて進むには,意識の高い助産師がいることが必要であった。また,この助産師が前に進む際には,【院内助産の背景】で示される上り坂が重要であった。ゴールに向かって上り坂を進む助産師を後押しする因子として,《開設へのプラス要因》としての〈世間の動向〉,〈助産師の意識統一〉,〈院内助産類似の状況〉,〈助産外来の自立〉と,《キーパーソンの関わり・支援》としての〈師長による意思統一に向けた介入〉,〈医師・病院の受け入れ,要望〉が存在した。また,進行を妨げる因子として,《開設へのマイナス要因》としての〈医師の抵抗〉,〈助産師の責任に対する不安〉が存在した。この坂道は,後押しする因子が妨げる因子に勝った場合に前に進むことができた。次の平坦な道のりは進行がスムーズであった。
結 論
 院内助産開設に向けて進むには,助産師が高い意識を持つことに加えて後押しをする環境が必要である。

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© 2012 日本助産学会
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