日本助産学会誌
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原著
母親の養育システムの発達
—産後6~7か月までの「愛着養育バランス」尺度の変化から—
武田 江里子小林 康江
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2013 年 27 巻 2 号 p. 237-246

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抄録

目 的
 母親の養育システムの発達を測定する尺度として開発された「愛着—養育バランス」尺度の経時的変化をみることで,産後6~7か月までの母親の養育者としての発達過程を明らかにし,発達状況に応じた支援策を講じるための基礎資料を得る。
方 法
 産後1か月健診を受診した母親に継続調査を依頼し,産後6~7か月時までの調査で有効回答の得られた116名を分析対象とした。調査票はすべて郵送にて回収した。「愛着—養育バランス」尺度と出産歴および育児相談者の有無を調査内容とした。「愛着—養育バランス」尺度を構成する6因子の推移については一元配置分散分析にて比較し,子どもの月齢や初産婦か経産婦かの6因子への影響を共分散構造分析にて確認した。
結 果
 6因子の中で初産婦・経産婦で有意差がみられたのは,産後1か月時で「適応:愛着」「敏感性:愛着」「敏感性:養育」,産後3~4か月時と産後6~7か月時で「敏感性:愛着」であった。産後の3つの時期で有意差がみられたのは,初産婦で「適応:愛着」「敏感性:養育」であり,経産婦で「敏感性:養育」であった。出産歴および子どもの月齢は6因子のいくつかに有意に影響していたが,推定値が0.2以上であったのは,出産歴と「敏感性:愛着」,子どもの月齢と「敏感性:養育」のみであり,いずれも決定係数は1割程度であった。
結 論
 産後1か月から6~7か月は,「適応:愛着」が低下し,「敏感性:養育」が上昇した。「敏感性:愛着」は時期での有意差はなかったが,経産婦の方が高い傾向がみられた。子どもの月齢や初産婦か経産婦かは,養育システムへの影響要因ではあったが強い影響とは言えなかった。以上より,養育者としての発達は,安易に初産婦・経産婦とか,子どもの月齢によって判断するのではなく,6因子それぞれの発達状況とそこに影響する要因をアセスメント材料の一つとして用いることで,有効な支援策に結びつくと考える。

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© 2013 日本助産学会
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