日本助産学会誌
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総説
予防接種の意思決定支援:文献レビューと意思決定支援ツールの紹介
遠藤 亜貴子堀内 成子
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2014 年 28 巻 1 号 p. 5-15

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抄録

目 的
 本研究の目的は,以下の2つである。
1.予防接種に関する意思決定支援を実施した国内外の文献をレビューし,支援効果を検討する。
2.Web上で入手可能な,予防接種のための意思決定支援ツール(デシジョンエイド)を,その質の基準も含め紹介する。
方 法
 目的1については,予防接種の接種決定に際し意思決定支援を行った国内外の文献をキーワード検索し,支援によりアウトカム(接種率,決定の質)が向上したか否かを分析した。目的2に関しては,インターネットでアクセスできる予防接種に特化した意思決定支援ツールの種類と内容を紹介し,それらツールがどのような基準に基づいて開発・評価されているのか,国際的な基準作りの流れも含めて解説した。
結 果
 文献レビュー:抽出された6文献は,すべて日本以外の先進国で行われた研究であった。そのうち4文献が意思決定支援の介入効果を測るRandomized Controlled Trial(RCT)であった。すべてのRCT研究に接種の有無を測る指標(接種率,接種行動,接種意図等)が含まれていた。ただし,接種に至ったか否かは副次的なアウトカムの位置づけで,むしろ心理的指標(葛藤,不安,満足度,自信等)を主要アウトカムとし,決定の質を測っていた。
 意思決定支援ツールの紹介:予防接種のための代表的な意思決定支援ツール6つは,すべて欧米で開発されたもので,質の国際基準(簡易版IPDAS)チェックリストに照らして評価がなされている。6ツールのうち,すべての評価項目を満たすツールは1つのみであった。
結 論
 予防接種の決定支援を行った研究は少なく,支援効果も限定的である。支援のタイミングや支援方法の探求,および評価のためのアウトカム指標の検討が必要である。
 意思決定支援ツールの質の標準化を目指す国際基準設定の動きがあり,今後はこの評価基準を念頭に置いてツールの開発や活用を行っていく必要がある。

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© 2014 日本助産学会
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