日本助産学会誌
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娘の産後里帰りを引き受けた実母の体験
中村 敦子
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2014 年 28 巻 2 号 p. 239-249

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抄録

目 的
 本研究の目的は,実母が娘の産後の里帰りを引き受けた体験に,実母の人生においてどのような意味があるかを明らかにすることである。
対象と方法
 自然分娩した初産の娘の産後の里帰りを4~6週間引き受け,その後の経過が2ヶ月以内の実母5名に半構造化インタビューを行い,質的帰納的に分析した。
結 果
 実母の人生において娘の産後里帰りを引き受けた体験の持つ意味として,【母親としての潜在的能力の発揮】【娘と孫から得られた幸福】【自己成長への気づき】【人生の新たな方向性への気づき】の4つのコアカテゴリーが抽出された。コアカテゴリーの【母親としての潜在的能力の発揮】は《娘の母親,妻,人としての成長過程への見守り》《娘夫婦の幸福への力添え》のカテゴリーから,コアカテゴリーの【娘と孫から得られた幸福】は《娘の成長への喜びと愛着の深まり》《孫から得た癒しと感動》のカテゴリーから,コアカテゴリーの【自己成長への気づき】は《娘を育てたことの自負心》《疲労感と自己犠牲の受容》《寛容で大らかな自分への気づき》のカテゴリーから,コアカテゴリーの【人生の新たな方向性への気づき】は《娘との新たな関係の構築》《娘の役に立てた喜び》《今後の自分らしい生き方の方向性》のカテゴリーから構成された。
結 論
 実母の立場から娘の産後里帰りを引き受けた体験には,単なる育児支援ではなく,以下の意味があることが明らかになった。娘の母親である喜びとして,娘の母,妻,人としての成長への喜びと愛着,親密性を深める。娘夫婦の良好な関係性を見守り娘夫婦の幸福に力添えし,娘の夫との関係性を形成する。娘の子どもの祖母である幸福として,親密性と愛着を深め癒しを得,孫の成長に感動し活力を得る。自己成長する自分に気づき,娘との新たな関係性を構築し,家族を大切にしながら個としての自分の人生を大切にするという生き方の新たな方向性を見出し,発達し続ける自己に気づく意味がある。

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© 2014 日本助産学会
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