日本助産学会誌
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高度生殖補助医療および一般不妊治療後妊産褥婦の抑うつ傾向とストレス対処能力の関連
—妊娠末期から産後1ヶ月までの縦断的調査—
深尾 千晴我部山 キヨ子
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2014 年 28 巻 2 号 p. 260-268

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抄録

目 的
 本研究の目的は,高度生殖補助医療(ART)および一般不妊治療後妊産褥婦における抑うつ傾向とストレス対処能力の経時的変化,関連,影響要因を明らかにし,援助の方向性を探ることである。
対象と方法
 調査期間は2011年3~10月。京都府内の1病院において,研究参加に同意を得た妊婦95名(自然妊娠群36名,一般不妊治療群13名,ART群46名,有効回答率95%)を対象に,妊娠末期,産後早期(産後2~7日),産後1ヶ月の3時点で,病歴調査,抑うつ傾向(EPDS),ストレス対処能力(SOC)の縦断的調査を実施し,3群で比較した。
結 果
 一般不妊治療群では,3時期のEPDSは高値,SOCは低値を示す傾向が見られたが,有意差は認められなかった。EPDSとSOCの関連は,ART群では3時期とも有意な負の相関(r=-.500~-.592, p<.01),一般不妊治療群では妊娠末期を除き有意な負の相関(r=-.563, -.640, p<.05),対象者全体においても妊娠末期(r=-.466, p<.01),産後早期(r=-.592, p<.01),産後1ヶ月(r=-.623, p<.01)に比較的強い負の相関を認め,EPDS合計点が高値である程SOC合計点が低値を示した。影響要因に関しては,産後1ヶ月のEPDSは高齢初産婦で高い傾向(p=.056),妊娠末期と産後1ヶ月のSOCは高齢妊産褥婦で低い傾向がみられた(p=.057, p=.052)。
結 論
 ART後妊産褥婦の抑うつが注目される中,一般不妊治療後妊産褥婦の抑うつ傾向が最も高かったことから,不妊治療後の妊産褥婦全般に対する早期からの支援が必要である。また,周産期を通して抑うつ傾向やストレス対処能力は変化し,EPDSとSOCは密接な関連をしていた。従って,EPDSが高値を示す“一般不妊治療群”,“高齢初産婦”に対して,ストレス対処能力を高める支援が重要である。

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© 2014 日本助産学会
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