日本助産学会誌
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e-learningによる分娩後出血対応に関する助産師継続教育プログラムの評価
加藤 千穂片岡 弥恵子五十嵐 ゆかり蛭田 明子
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2015 年 29 巻 1 号 p. 77-86

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抄録

目 的
 助産師を対象とした,分娩後出血に関する知識習得のためのe-learningによる教育プログラムを評価することである。
対象と方法
 研究対象者は関東圏内で産科病棟を有し,分娩を取り扱う病院·診療所,助産所に勤務する助産師である。e-learningは目標に沿って4つのチャプターで構成した。測定用具は分娩後出血対応に関する23項目の知識テストおよびプログラム評価の自記式質問紙とし,e-learning前後で回答を得た。
結 果
 48名を分析対象とした。知識テスト合計得点の平均値は事前テスト15.85点(range 11-21点, SD2.78),事後テスト20.02点(range 14-23点, SD2.21)であり,有意に知識得点が上昇した(t=10.27, p<.001)。実施前後で正答率が有意に上昇した項目は「弛緩出血の特徴」「出血に関連する凝固因子」「ショックを起こす循環血液量喪失の割合」「成人の循環血液量」「出血性ショック時の対応」「希釈性凝固障害の特徴」「細胞外液の構成」「産科DICの特徴」「循環血液量増加の理由」「ショックインデックスからの出血量予測」「産科出血時に必要な輸血製剤」「血漿中の成分」の12項目であった。正答率が低かった項目は「膠質浸透圧に関わる物質」「晶質浸透圧に関わる物質」の2項目であった。また,合計得点の平均値と参加者の特性について2元配置分散分析を行ったが,有意差は認められなかった。e-learningの操作方法,教材の適切性,内容の満足度ともに肯定的な評価が得られ,プログラムの構成は有用であった。
結 論
 分娩後出血対応に関するe-learningは,知識習得に効果があると言える。出血時の輸液療法に関連する生理学の理解が得られにくかったため,内容の修正と知識の維持に関する長期的評価,ガイドライン等の周知徹底のためのプログラム内容の検討が今後の課題である。

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© 2015 日本助産学会
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