日本助産学会誌
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原著
父親に対する死産のケアの困難感と影響要因
諸岡 ゆり
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2016 年 30 巻 2 号 p. 290-299

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抄録

目 的
 助産師,看護師が抱く父親に対する死産のケアの困難感とその影響要因を探索する。
対象と方法
 18項目から構成される父親に対する死産のケアの困難感の質問紙を作成し,横断的記述研究を行った。質問紙のクロンバックα係数は.932(各因子.77~.92)であった。得点の範囲は18点から72点で,高得点であるほど困難感が高いことを示す。研究対象者は関東圏内の39施設(周産期母子医療センター,総合病院)の産科病棟に勤務し,対象の条件を満たす助産師,看護師730名であり,有効回答451名(85.3%)のデータを用いて統計学的に分析した。
結 果
1 .父親に対する死産のケアの困難感の平均は54.0±9.2点(範囲;18-72点)であった。父親に対する死産のケアの困難感は4因子で特徴づけられ,【父親の反応に対する近づきにくさ】が最も高く,【父親の希望を引き出すこと】,【拒否を示す父親への対応】,【父親に関わる看護者(自分)自身の感情への対応】から構成された。中でも,〈医療者に不信を抱く〉,〈怒りを表出する〉,逆に〈感情を表現しない〉,〈平静を装う〉父親に近づくことに最も困難感を抱いていた。
2 .父親に対する死産のケアの困難感に影響する看護職者側の要因は,死産後の両親の悲嘆に関する知識,死産後の両親の体験を見聞きした経験,死産のケアの経験例数,プライマリナースとして死産のケアに関わった経験の4項目であった。
3 .父親に対する死産のケアの困難感は,死産後の両親の悲嘆に関する知識との間に弱い負の相関があり(r=-.38, p=.001),一方,父親に対する死産のケアの改善意欲との間に弱い正の相関があった(r=.27, p=.001)。
結 論
 父親に対する死産のケアの困難感は【父親の反応に対する近づきにくさ】が最も高かったが,知識,ケアの改善意欲と関連があった。助産師,看護師向けの現任教育において,父親に焦点を当てた教育プログラムを開発することが今後の課題である。

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© 2016 日本助産学会
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