日本助産学会誌
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産褥早期における帝王切開後の子宮復古
—アセスメント指標のための基礎データ—
下見 千恵竹中 和子
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2016 年 30 巻 2 号 p. 333-341

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抄録

目 的
 帝王切開後の子宮復古について経日的変化を明らかにし,子宮復古状態のアセスメントのための基礎的データを得ることを目的とした。
方 法
 単胎で正期産にて帝王切開分娩し,その後順調に経過した70名を対象に,産褥0日から7日目まで子宮底長および子宮底高を計測した。この70名のうち,悪露の色調に関する分析対象は48名であり,日々の悪露の色調の変化を自記式の質問票を用いて調査した。統計ソフトは,SPSS ver. 22.0を使用し,有意水準を5%未満とした。
結 果
 子宮底長(平均値)は,産褥0日の18.1cm±0.32(mean±SE)から徐々に下降し,産褥3日目には15.6±0.21cm,産褥7日目には13.4±0.20cmとなった。産褥2日目までは1日当たり約1cmずつ下降し(p<.01),さらに1cm下降したのは4日目および6日目であった(p<.01)。産褥0日の子宮底高(中央値)は臍下1横指,産褥3日目は臍下2横指,産褥6日目には臍下3横指となった。また,レンジが大きかった。
 褥婦が認識した悪露の色調は6日目から有意に変化した(p<.05)が,3割の褥婦はまだ赤色悪露が続いていた。
結 論
 帝王切開後の子宮底長は経腟分娩と比べ明確に異なり,大きかった。また触診による子宮底高の変化では,1横指下降に3日間を要すること,データのレンジが大きいことがわかった。特に触診値においては,そのアセスメントに個人差を考慮する必要がある。悪露の色調変化も同様に遅れる傾向を認め,子宮の退縮は経腟分娩に比し遅く,緩やかであった。
 正期産かつ単胎で術後順調な,極めて一般的でスタンダードな帝王切開事例を前提とした本研究結果は,産褥早期におけるCS後の子宮復古に関する基礎的データであり,評価基準の一つとなりうる。

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© 2016 日本助産学会
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