日本助産学会誌
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原著
妊娠期における能動的起立負荷による自律神経活動の推移
和泉 美枝眞鍋 えみ子渡辺 綾子植松 紗代
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2020 年 34 巻 1 号 p. 50-60

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抄録

目 的

妊娠期の起立負荷による自律神経系の調節機構を解明するため,能動的起立負荷による初・中・末期の自律神経活動を検討する。

対象と方法

妊婦73名に縦断的に妊娠各期の起立負荷時の心拍変動を測定し自律神経活動を解析した。指標は総自律神経(CVRR),交感神経(LF/HF),副交感神経(CCVHF),交感・副交感神経(CCVLF)で分析には座位4分間(座位),立位直後1分間(起立),立位後1~2分の1分間(立位),座位直後1分間(着席)のデータを用い妊娠時期と体位による反復測定二元配置分散分析及び下位検定をした。

結 果

妊娠時期の主効果はLF/HFとCCVLF,起立の主効果は全指標,交互作用はCCVHF以外に見られた。多重比較ではCVRRとCCVLFは3時期とも座位より起立時は有意(全てp<.001)に上昇,立位時は下降(中期のみ有意で順にp=.004, .033),着席時は有意(全てp<.001)に上昇した。妊娠時期の比較ではCCVLFは末期は初期より座位・起立・着席時は有意(順にp=.015, .032, .008)に低値であった。LF/HFは3時期とも座位より起立時は有意(初・中期p<.001,末期p=.001)に上昇,立位時は初・末期は有意(初期p<.001,末期p=.004)に高値を維持したが,中期は座位時と有意差のない値まで下降した。また末期は中期より起立時は有意(p=.015)に低値であった。CCVHFは3時期とも座位より起立時は下降し(初期p=.001,中期p<.001),立位時は有意に下降(全てp<.001),着席時は上昇(中期p=.011,末期p<.001)した。

結 論

妊娠時期により起立負荷が自律神経活動に及ぼす影響の大きさは一様でなく,中期は立位時のCVRR,LF/HF,CCVLFの抑制,末期は起立時のLF/HF,CCVLFの抑制が示された。

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