日本助産学会誌
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原著
特別養子縁組に児を託すことを考える生みの母へのケアにおける助産師の経験
堀内 遥子板谷 裕美古川 洋子
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2020 年 34 巻 2 号 p. 169-182

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抄録

目 的

特別養子縁組に児を託すことを考える生みの母へのケアにおいて,助産師がどのような経験をしているのかを明らかにし,生みの母に対する助産ケアの質向上への示唆を得る。

方 法

特別養子縁組を考えている妊産婦への支援を表明している医療施設に勤務する助産師9名に,半構成面接法にて「養子縁組に児を託すことを考えている妊産褥婦たちにどのようなケアをしてきたのか,その際どのようなことを感じたり,考えたりしていたのか」を尋ね,「生みの母へのケアにおいてどのような経験をしてきたのか」という視点を持って質的記述的に分析した。

結 果

助産師は,支援団体や病棟内スタッフと連携し【チームで一丸となって生みの母をケアする】経験をしていた。そして,複雑な事情を抱えて来院する生みの母を受容し,【心身ともに健康に妊娠・出産を乗り越えられるよう支援する】経験をしながら,【特別視することなくいつも通りの助産ケアに尽力する】経験をしていた。また,【育まれつつある母性感情を感じ取り生みの母としての母子接触の権利を守る】経験をしていた。さらに,【養子縁組を自己決定する生みの母の苦悩を感じながら揺れ動きのプロセスを冷静に見守る】とともに,養子縁組を選ぶ理由が腑に落ちないなど,【養子縁組の選択を支援するプロセスの中で倫理的葛藤が渦巻く】経験をしていた。同時に,医療者としての責任を保つために,【感情や葛藤をケアに入れ込まないように努める】経験をしていた。そして,【ケアが終わっても釈然としない思いが残る】一方で,生みの母への対応を学ぶなど,【事例を積み重ねるたびにケアを技能として獲得しさらに新たな助産ケアの視点や課題が派生する】過程を歩んでいた。

結 論

生みの母へのケアにおいて,助産師に葛藤や感情規制が生じうることへの理解,社会の動向を正しく理解しようとする助産師の姿勢が望まれることが示唆された。

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