2023 年 37 巻 2 号 p. 126-138
目 的
育児相談など産後の母子支援の場面で,地域で働く熟練助産師が児童虐待や虐待リスクが高くなっている状況を発見する際の視点を明らかにする。
対象と方法
助産師経験年数10年以上で,助産院に就業しており,児童虐待事例,又は発生リスクが高くなっている親子への支援を行った経験がある助産師を対象とした。インタビューガイドを用いて半構造化インタビューを実施し,得られたデータを逐語録に起こし,その内容をKrippendorffの内容分析の手法を参考に質的に分析した。
結 果
研究参加者は4名であった。地域で働く熟練助産師が児童虐待を発見する際の視点は90のコード,37のサブカテゴリー,8のカテゴリーに集約された。地域で働く熟練助産師は,【自宅の環境に映し出されるもの】,【母親の心身の状態に現れる苦悩】,【援助希求能力の乏しさ】,【子どもへの愛着のもち難さ】,【子どもの状態と育て方の不一致】,【子どもへの行動化】,【子どもの危機的な状態】,【家族関係の不協和】の8の視点を持っていた。
結 論
地域で働く熟練助産師は,自宅の環境,母親や子どもの様子,家族の態度という多角的な視点を持っていたことが明らかになった。これらの視点は,母親の立場に立って,全人的な視点で援助関係を構築することによって初めて見えてくるものであった。そして母性擁護の立場からの援助関係を基盤として,支援を継続し続けていることが地域で働く熟練助産師の児童虐待発見とケアの視点であった。