日本助産学会誌
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胎児娩出感をもった女性の分娩体験
堀田 久美
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キーワード: 分娩体験, 産道
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2003 年 17 巻 1 号 p. 15-24

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抄録

目的
本研究は, 胎児娩出感をもった女性の分娩体験を明らかにし, 分娩時の女性の理解に向けた示唆を得ることを目的として行った。
方法質的記述的研究方法を選択した。分娩後の女性, 18名に面接を行い, 分娩体験について自由に語ってもらった。面接の内容を逐語記録し, 胎児娩出感と分娩体験についての内容を質的に分析した。
結果
胎児娩出感をもった女性の分娩体験は, 自らの分娩を自己コントロールできたと自覚でき, 胎児との一体感を感じるものであり, 産んだという実感や分娩終了時の満足感および開放感と安堵感を感じさせるものであった。そして, 胎児の存在を自らの身体を通して感じることにより, 胎児の生命力に信頼をもてるとともに, 妊娠中からの連続したつながりの中で新生児に対する親近感をもちえている。また, 陣痛の苦痛を乗り越え分娩した自分に対し, 達成感や充実感をもたらし, 自らに備わっていた産む力を認識させるものでもあった。それは, 分娩を通して自己を受け入れ, 児を受け入れ, 分娩という出来事を確かに味わったという豊かな心情を生み出すものであった。
結論
胎児の娩出を, 自らの五感を通して感じ取っている女性がいた。女性たちにとって胎児娩出感をもつことは, 豊かな心情を生み出す大切なものであった。

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