日本助産学会誌
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周産期の女性が体験した医療者からのポジティブ・サポートとネガティブ・サポート
相川 祐里
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2004 年 18 巻 2 号 p. 34-43

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抄録

目的
本研究は, ソーシャル・サポートにおけるポジティブ・サポートとネガティブ・サポートという概念を用いて, 周産期の女性が体験した医療者とのかかわりをポジティブ・サポートとネガティブ・サポートに分け, その構成要素を明確にし, 比較検討する。その結果から, 医療者のかかわりがポジティブ・サポートになるために必要な要素は何であるかを明らかにすることを目的とする。
対象と方法
対象は, 研究承諾の得られた病院主催の母親学級に参加し, 妊娠合併症や, 妊娠によって増悪するような基礎疾患をもたないという条件を満たす者6名。データ収集には, 半構造化面接法を用い, 妊娠32週, 産後5日目, 産後1か月の3時点で実施した。得られたデータは, 面接内容を逐語録としてデータ化した後, 内容分析を用いて帰納的・記述的に分析を行った。
結果
分析の結果, 周産期における医療者からのポジティブ・サポートとしては,〈共感に基づいたかかわり〉,〈スクリーニング的なかかわり〉,〈「母親モデル」の提示〉,〈専門家に相談でき, また仲間と集える場の提供〉などが抽出された。また各時期におけるネガティブ・サポートとしては, 1) 妊娠期は〈対象者不在の情報提供〉,〈共感の欠如したかかわり〉, 2) 出産期は〈一方的な医療行為〉,〈気持ちを表出できない雰囲気〉, 3) 入院期は〈個別性が排除されたかかわり〉,〈医療的正義の押し付け〉,〈自己判断力を奪うような情報提供〉, 4) 産後1か月間は〈対象者不在の情報提供〉,〈共感の欠如したかかわり〉というカテゴリーが抽出された。
結論
周産期の女性と医療者との間でも, ソーシャル・サポートの一側面であるネガティブ・サポートが発生していることが明らかになった。そしてネガティブ・サポートとポジティブ・サポートを比較すると, 医療者のサポートが意図した効果をもたらすには, そのサポートは受け手が必要としているサポートであるか, 医療者が自身の発する影響力を考慮しているかが大きく関与していることがわかった。

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