日本助産学会誌
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初乳中ビスフェノールA濃度と食器包装容器使用との関連
立岡 弓子
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2004 年 18 巻 2 号 p. 63-70

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抄録

プラスティック食器容器の原材料であるポリカーボネイト樹脂・ポリスチレン樹脂から, 内分泌撹乱物質の一つである, ビスフェノールA (以下, BPAと記す) が溶出することが問題になっている。BPAは, 日常生活においてごく微量ながら食生活を通して体内に取り込まれている可能性が高いが, 母乳汚染に関する研究は行われていないため, 授乳する母親の食生活でのBPAの摂取状況との関連を明らかにする。
出産後3日目の授乳婦102名を対象に, 初乳検体を採取した。食器包装容器の質問紙調査では, ポリカーボネイト製耐熱容器・ペットボトル飲料水・コンビニ弁当・カップめん・缶コーヒー飲料について, 使用状況を調査した。抗BPA抗体を用い, 96穴マイクロプレート上にてELISA法により, 研究者自身が102検体の初乳中BPA濃度を測定した。
初乳102検体 (100%) からBPAが抽出された。初乳中BPA値は3.41±0.13 (m±SD N=102) ng/mlであった。そして, BPAが溶出する食器包装容器を使用した頻度の多い授乳婦から分泌された初乳中BPA濃度が, 高い傾向を示した。
内分泌攪乱物質であるBPAは, すべての初乳検体から検出された。普段の食生活において, BPAの摂取経路を絶つことが母乳哺育を行ううえで大切なことであると考えられた。

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