身体的フレイルとオーラルフレイルに関する客観的・主観的評価の関係を把握し,口腔機能とその意識としての主観的評価の意義について明かにすることを試みた.被検者は,1 歯科医院にメインテナンスで来院した患者225 名を対象とした.身体的フレイルの客観的評価として握力と歩行速度を,オーラルフレイルの客観的評価として咬合力を測定した.主観的評価は,嚙む力,歩く速さ,疲れにくさ,意欲について,「20 歳代の時を100 としたらどの程度ですか」という問いかけに対して,その値を記述させた.嚙む力および意欲に関する主観的評価は,比較的高く,次に歩く速さであり,疲れにくさは最も低かった.歩行速度と咬合力に関しては,客観的・主観的評価間に有意な相関関係が認められた.一方,意欲や疲れにくさに関して,歩行速度との間には有意な相関関係が認められたものの,咬合力との間には認められなかった.嚙む力に対する客観的・主観的評価の関連について,他の身体的能力における関連とは異なり,高齢者のフレイルを考えるうえで,嚙む力の客観的評価と主観的評価の両方が必要であることが示唆された.