植物研究雑誌
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渡島半島におけるアザミ属植物(キク科)の分布と季節消長
小泉達也藤山直之門田裕一片倉晴雄
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1997 年 72 巻 1 号 p. 1-8

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抄録

北海道南部の渡島半島において,アザミ食テントウムシ(Epilachna 属)の食草分布調査として,7種のアザミ属植物の分布を確認した.この地域にはチシマアザミ,マルバヒレアザミ,ミネアザミが優占する.チシマアザミは渡島半島北端部に豊富に自生しており,狩場山塊周辺で南方に分布するマルバヒレアザミと置き換わっていた.この2種のアザミの分布境界近辺には,頭花,総苞,葉柄,茎部表面の形状が両種の中間であるか,そのいずれとも異なっているために同定の困難なアザミが優占していた.渡島半島の南端部には,ミネアザミがマルバヒレアザミと同所的に分布していた.ほかの4種のアザミ(タカアザミ,オオノアザミ,エゾノサワアザミ,サワアザミ)は渡島半島に普通に見られるが,いずれの地域でも優占種とはなっていない.これらはしばしば上記の3優占種のいずれかと共存していた.上記の3優占種とオオノアザミ,サワアザミを北海道大学構内(札幌)に移植し,季節消長を定期的に観察したところ,開花期と枯死期に種間で著しい違いが認められた.

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© 1997 植物研究雑誌編集委員会
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