1997 年 72 巻 2 号 p. 93-109
「椒目」は利水薬として用いられている漢薬で,原植物は「花椒」と同じくミカン科のサンショウ(Zanthoxylum) 属の種子に由来するとされている.Zanthoxylum 属植物の種子は外形が類似しているため同定が難しく,また内部形態においても種皮が堅いため切片の作製が困難である.そこで本報では,「椒目」の原植物を明らかにする方法の開発を目的に中国,日本及びネパール産の16種3変種1品種の種子について走査型電子顕微鏡及び画像解析装置を用いて組織学的研究を行った.その結果,各種は外種皮においては表皮細胞の層数及び放射方向径と接線方向径の比率,表皮と厚壁組織の境界が描く閉曲線の形とその周辺凹凸度,厚壁組織の外層と内層の平均の厚さの比率,外種皮中で表皮の占める割合,種子の半径に対する外種皮の厚さの割合などに種間差が認められ,それぞれ同定可能となった.また,上海と山西省大同市場品はZ. bungeanum の種子,内蒙古フフホト市場品はZ. schinifolium の種子と果皮の混合品であることが明らかになった.