植物研究雑誌
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SieboldとZuccariniが日本から記載した分類群レクトタイプと原資料,第十三部.被子植物.単子葉植物綱 一
秋山 忍G. ThijsseH.-J. Esser大場秀章
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2020 年 95 巻 1 号 p. 9-33

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抄録

SieboldとZuccariniは,主にSiebold自身,および日本人植物学者,Bürgerらの採集品を研究し,日本から多数の新種や新変種を発表し,日本植物相の分類学的研究に大きな貢献を行った.しかしながら,それらの新植物の発表に際しては大半で標本の引用がなく,またタイプの指定がなされなかった.

 SieboldとZuccariniが命名した学名の安定化などの目的で,ライデン,ミュンヘン,牧野植物標本館(首都大学東京),東京大学総合研究博物館に収蔵されるシーボルト・コレクションから標本上に記された手記ならびに記載文などと照合し,SieboldとZuccariniが記載に用いた標本(原資料)であるオリジナル・マテリアルを特定する研究を進めている.さらに,タイプが指定されていない分類群では,特定した原資料のなかからレクトタイプを選定する研究を行っている.

 本稿はその第十三部で,被子植物単子葉植物綱(オモダカ科からユリ科)を収載した.Funkia grandiflora Siebold ex Lemaire(タマノカンザシ),Lilium callosum Siebold & Zucc.(ノヒメユリ),L. jamajuri Siebold & de Vriese(クロジクテッポウ),L. partheneion Siebold & de Vriese (アカヒメユリ),L. speciosum var. kaempferi Siebold & Zucc.(カノコユリ),L. speciosum var. tametomo Siebold & Zucc.(シロカノコユリ)のレクトタイプを選定した.また,Thunbergが命名した学名Lilium speciosum(カノコユリ)のレクトタイプを選定した.今回対象とした範囲には観賞用園芸植物としてSieboldが注目したギボウシ属やユリ属などが含まれている.シーボルトは園芸用の販売カタログ等に多数の新学名を発表したが,その大部分は記載がなく,該当する標本も見出すことができなかった.本稿は当初より正式な発表の有無にかからずSieboldとZuccariniが日本から発表した分類群をすべて掲載する方針を採っている.とくにギボウシ属では,それらの未記載名が,園芸界では多くの専門書やカタログ等で取り上げられ利用されている.ユリ属では,新組合Lilium speciosum Thunb. f. tametomo (Siebold & Zucc.) H. Ohba & S. Akiyama(シロカノコユリ)を提唱した.

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© 2020 植物研究雑誌編集委員会
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