南アジア研究
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植民地期インドにおける「農民」の登場-ビハール州キサーン・サバーの系譜-
小嶋 常喜
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2008 年 2008 巻 20 号 p. 118-139

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抄録

インド史における1930年代は、民族運動の大衆化と農民運動の活性化によってカテゴリーとしての「農民」が登場した時代である。本稿はビハール州のキサーン・サバー運動を取り上げ、社会史的文脈からこの時代についての説明を加える。ビハール州における農民運動の一背景として、ヤーダヴやクルミーなどの中位農耕諸カーストによるアイデンティティ構築および社会的地位の上昇を目指すカースト運動が挙げられる。この運動は高位カーストとの衝突を繰り返すことで耕作者としての諸問題をもクローズアップし、カーストとは異なる次元でより広範に組織化が行われる契機となった。こうして1930年代におけるキサーン・サバー運動では、この中位農耕諸カーストだけでなく、多様な集団が「農民」というゆるやかな「階級」として組織され、その共通の利益が主張されることになった。

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