2011 年 20 巻 3 号 p. 185-201
本研究では,比較的小規模な資金を元に運用を行う個人投資家を対象とするポートフォリオ最適化問題について論じる.このような個人投資家にとって,問題を複雑にする固有の要因として株式の最小取引単位が挙げられる.そこで,最小取引単位を反映した資産運用モデルを定式化するために,確率ネットワークと整数計画法を用いたモデルを説明する.その際,リスク尺度として分散・C-VaRを用いた二つのモデルを紹介し,これらのモデルが最適化パッケージを用いることで,現実的な時間で求解できることを示す.また現実の株価データに基づくシミュレーションによってモデルのパフォーマンスに関する検証を行い,市場の下降局面においてはリスク尺度として分散を用いたモデルが優位であり,上昇局面では,C-VaRを用いたモデルのほうが優位であることを示す.