抄録
彎曲管の撓性に關しては過去約20年間に多くの實験的及理論的研究が發表せられて居る。理論的研究の糸課は普通の梁理論で計算したものに對してpipe factorλ (=tR/r2) なるparameterの函数で修正せねばならぬことには皆一致して居るが、其の修正因子Kの値は各研究者の定めた假定に依つて可なり相違して居る。從つて系統的な精確な且つ廣汎な實験的研究に依つてのみ最も實際に近いKの値を確むべきであるが、實験的研究には色々と難しい状態が伴ふ爲に、各研究者に依つて得られた結果は區々である。然し現在では一般に普通のλの範圍では、換言せばt/rの値が普通である管をR/rが普通の値になる様に彎曲したものに對しては、KármánのKの値が最も實際に近いと認められて居る様である。
茲に発表するものは近年横須賀海軍工廠造機部で行はれた種々な彎曲鋼管に就ての實験の結果の一部であるが、此の實験の目的は誰の理論が最も實際に近いかを確あると云ふことよりも、與へられた圖面で製造した實物のKの値がKármánのKの値を標準とした場合如何なる程度に狂ふかを見當つけるに在つたのである。
茲に發表しない實験の結果、殊に彎曲波型鋼管の撓性に就ては、若し機會を與へらるゝならば更に發表する豫定である。