日本外傷学会雑誌
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原著
重症頭部外傷急性期における頭蓋内病態の差異による脳循環の検討
本多 満一林 亮豊田 幸樹年伊東 俊秀横室 浩樹田巻 一義岸 太一
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2017 年 31 巻 1 号 p. 1-7

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抄録

 [はじめに]重症頭部外傷症例において急性期に脳循環不全がみられ,この時期の虚血が転帰を悪化させているという報告がある.今回われわれは,異なるタイプの重症頭部外傷の脳循環を比較検討した.[対象および方法]重症頭部外傷90例を,局所性脳損傷として急性硬膜下血腫(以下SDH),急性硬膜外血腫,脳挫傷・脳内血腫,瀰漫性脳損傷として瀰漫性軸索損傷,瀰漫性脳腫脹の5つの群に分け,急性期にキセノンCT(Xe-CT)とperfusion CTを同時に行い,それぞれの検査より脳血流量(以下CBF),平均通過時間(以下MTT)を測定し,脳循環評価を行った.[結果]局所性脳損傷群は瀰漫性脳損傷群に対してCBFは低く,MTTは延長しており脳循環障害を認めた.5群間の比較としてはCBFとMTTにおいて分散分析では有意差を認め,SDH群においてCBFが最も低値を示し,MTTでは一番高値を呈した.[結論]重症頭部外傷の異なるタイプにおいて,脳循環には差を認めた.治療を行う際には,異なる脳循環を考慮して低体温療法を含めた総合的な治療を考慮する必要がある.

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© 2017 一般社団法人 日本外傷学会
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