2017 年 31 巻 1 号 p. 28-30
症例は80代,女性.近医で腹部刺創による下大静脈損傷に対しガーゼパッキング施行後,当院に転院搬送となった.来院時,全身状態は安定していたため,転院後4日目に再手術を行った.ガーゼを除去すると,左腎静脈流入部直上の下大静脈本幹に約1/4周性の裂創が認められ,直視下に連続縫合で閉鎖した.その他は十二指腸に軽微な漿膜損傷を認めるのみであった.術後,深部静脈血栓症を認めたが全身状態は良好であり,術後第19病日に紹介医に転院となった.
下大静脈の鋭的損傷は外科的修復が原則であるが,縫合止血が困難な場合にはガーゼパッキングも選択肢の一つとして考慮するべきである.