2020 年 34 巻 3 号 p. 70-74
鈍的腰部外傷で下肢の血栓塞栓症を来した報告は稀である. 症例は54歳男性. シャッターが2mの高さから腰部に落下し受傷, 両下肢麻痺と感覚障害で救急搬送された. 腰部打撲痕と右下肢の感覚障害, 麻痺を認め, 右足背動脈, 右後脛骨動脈は触知できなかった. 造影CTで右膝窩動脈閉塞と腹部大動脈の著明な粥状硬化性変化を認めた. 急性下肢動脈閉塞に対し血栓除去術を施行したが右前足部で黒色壊死が進行, 下肢切断術施行し転院となった. 腰部外傷後の下肢麻痺の原因としては脊髄損傷・脊髄梗塞が考えられるが, 大動脈由来の血栓で急性下肢動脈閉塞を合併した本症例は, より迅速な診断・治療により救肢できた可能性があるため, 報告する.