行動分析学研究
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コンピュータを用いた音声知覚の測定 : 日本人の/ra/-/la/音の知覚と聴覚障害児(補聴器・人工内耳装用児)の英語の母音の知覚
真辺 一近河嶋 孝Mior James E.Dooling Robcrt J.
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1999 年 13 巻 2 号 p. 100-114

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抄録

外国語習得者および聴覚障害児の音声の聞き取りの測定を行うために、音声の差異の検出を課題としたゲーム形式の聴覚測定コンピュータプログラムを作成した。この聴覚測定コンピュータプログラムの有効性を検討するため、日本語を母国語とする日本人(NJ)と英語を母国語とするアメリカ人(NE)の/ra/-/la/音声の知覚の差異を、コンピュータプログラムと同定課題の両測定法で測定した。また、聴覚障害児(補聴器あるいは人工内耳装用児)の英語の母音の知覚の測定を行った。実験1では、コンピュータプログラムおよび同定課題の両測定法で従来と同様に、/ra/一/la/音声のカテゴリカルな知覚がNEでは見られたのに対し、NJでは見られなかった。コンピュータプログラムによって得られた反応潜時に基づくINDSCALによる個人間の知覚の類似度と、同定課題の結果は良く一致していた。実験2では、/ra/一/la/音の連続体上の特定の音声の物理的音量を5dB上昇させると、コンピュータプログラム(検出課題)の測定結果が同定課題に比べてより影響を受けることが確かめられた。これは特にNJで顕著であった。実験3では、音量をランダムに変化させることにより、ラウドネスの違いによる検出課題における測定への影響を相殺できる事を確かめた。聴覚障害児への応用を行う上で検出課題を用いる場合は、測定の対象となっている特定次元以外の次元が、付加的な手がかりにならないように統制する事が必要であることが指摘された。また、コンピュータプログラムで得られたデータをもとにした多次元尺度構成法による英語の母音の知覚マップは、従来の結果と良く一致した。

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© 1999 一般社団法人 日本行動分析学会
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