研究の目的 自閉性障害児を対象に、見本合わせ(MTS)及び構成反応見本合わせ(CRMTS)課題を用いた指導を行い、濁音の読み獲得に対する効果を検討した。研究計画 プレポストデザインを用いた。MTS課題やCRMTS課題の指導後に、濁音の口頭読みテストや濁音の聞き取り読みテストを評価した。場面 大学の指導室で行った。参加児 平仮名濁音の読みが困難な8才の自閉性障害男児1名を対象とした。介入 コンピュータの指導プログラムを用いた。CRMTS課題では音声単語や絵、あるいはその両方に対して文字単語を構成することを指導し、MTS課題では単音節に応じて清音あるいは濁音を選択することを指導した。行動の指標 MTS課題及び、CRMTS課題における正反応率と、平仮名濁音の読みの正反応数を行動の指標とした。結果 CRMTS課題の指導後は濁音読みの正反応率はほとんど上昇しなかったが、濁点の視覚弁別を求めるMTS課題導入後、濁音読みの正反応率は上昇した。4つの濁音の読みを獲得した後、未学習の濁音読みの般化が示された。結論 MTS課題とCRMTS課題を用いた指導は、自閉性障害児の濁音の読み獲得に有効であった。特に、MTS課題による濁点の視覚弁別指導が効果的であったと考えられた。この結果から、参加児が濁点の視覚弁別の獲得、あるいは濁点の観察反応を獲得した可能性により、濁音の読みが獲得されたことが示唆された。