行動分析学研究
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実践報告
重度運動麻痺と認知機能障害を呈した脳卒中患者の車椅子駆動動作に対する身体的ガイドの有効性
佐々木 祥太郎大森 圭貢杉村 誠一郎最上 谷拓磨多田 実加中村 恵理大宮 一人
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2016 年 30 巻 2 号 p. 137-144

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抄録

研究目的 重度運動麻痺と認知機能障害を併発した脳卒中患者1例を対象に車椅子駆動練習における身体的ガイドの有効性を明らかにすることを目的とした。研究計画 シングルケースデザイン(ABABB′法)を用いた。場面 A病院にて実施した。対象 44歳のくも膜下出血患者1名を対象とした。介入 標的行動は車椅子駆動動作とした。ABABB′の条件は、車椅子駆動動作をセラピストが教示しながらモデリングして提示する条件(ベースライン)と対象者の左手にセラピストが手を添えて5回車椅子駆動動作を実施する条件(身体的ガイド介入期)、身体的ガイドの回数を1セッションにつき1回ずつ減らして介入する条件(フェイドアウト期)とした。結果 身体的ガイドを用いた練習では、教示とモデリングのみの介入に比べて、車椅子駆動の回数は有意に多かった。また、駆動回数の推移は教示とモデリングの介入では、増加傾向を認めなかったが、身体的ガイドを用いた練習では、駆動回数は増加傾向であった。身体的ガイドを除去した消去期には、車椅子駆動回数は急速に減少した。一方、徐々に身体的ガイドをフェイドアウトした場合には、駆動回数は減少しなかった。結論 重度の運動麻痺と認知機能障害を併発した患者においては、練習方法の違いによって標的行動の出現の相違があり、身体的ガイドを用いた練習により、生起した運動の持ち越し効果が得られる可能性がある。

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© 2016 一般社団法人 日本行動分析学会
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