行動分析学研究
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論文
通級指導教室における平仮名の書字に困難を示すLD児に対する支援の検討――エラーパターンに沿った数量的な判読性の評価基準を活かした支援の効果から――
須藤 邦彦宮野 玲子
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2016 年 31 巻 1 号 p. 15-29

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抄録

研究の目的 通級指導教室において平仮名の書字に困難を示すLD児に対する支援を行った。そして、これまでの平仮名のエラーパターンから数量的な評価基準を抽出し、参加児が理解できるように加工したうえでフィードバックする支援方法の有効性(判読性と動機づけの改善)を検討することであった。研究計画 課題間マルチベースラインデザインを用いた。場面 小学校通級指導教室で実施した。参加児 平仮名の書字に困難を示し、かつ書字活動への動機づけが著しく低下してしまっている小学校通常学級第1学年のLD児1名と支援者(長期研修派遣教員)1名が参加した。独立変数 エラーパターンから抽出した数量的な判読性の評価基準を加工して見本として提示し、口頭でも要点を教示した。また、参加者が記した文字をその都度見本と比較し、その差をフィードバックした。行動の指標 判読性として正しく文字を記す反応(正反応)の生起割合を、また動機づけとして連絡帳に記した文字の割合を求めた。結果 介入後、正反応の生起割合が上昇し、その効果が通常学級にも般化した。また、通常学級における連絡帳への書字割合が増加した。結論 エラーパターンから抽出した数量的で客観的な評価基準と、それに基づいた自己記録や自己評価とを合わせた支援方法が、児童の書字活動における判読性や動機づけ、そして通級と通常学級との支援者間の連携に有効である可能性を示唆した。

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© 2016 一般社団法人 日本行動分析学会
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