2020 年 34 巻 2 号 p. 198-210
現在、米国の学校場面では、学校規模ポジティブ行動支援(school-wide positive behavior support: SWPBS)と介入に対する反応性モデル(response to intervention: RTI)のような、システムアプローチが幅広く実践され、研究されている。学業支援を中心とするRTIは、日本の特別支援教育においても少しずつ紹介されるようになり、RTIを参考とした実践研究も行われてきているがその数は少ない。RTIはSWPBSとの共通点も多く、行動分析学との関連も深いが、そのことは日本においてはほとんど紹介されていない。本稿では、RTIの主要な要素(多層予防システム、スクリーニング、プログレス・モニタリング、データに基づく意思決定)について解説し、RTIの構成要素(データに基づく意思決定、チームアプローチ)について、教員の指導行動に対する刺激性制御の観点から整理する。そして、近年のRTIとSWPBSを統合した多層支援システム(multi-tiered system of support: MTSS)について紹介する。最後に、日本におけるシステムレベルでの学校改革に向けた課題について、学校内および学校外の随伴性の整備の観点から整理する。