行動分析学研究
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研究報告
大学生による講義のノートテイキングと教員の教授行動の時系列評価――手書き行動の測定装置を用いて――
吉岡 昌子藤 健一佐藤 敬子
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2020 年 35 巻 1 号 p. 30-41

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抄録

研究の目的 第1に、大学生による講義のノートテイキングを吉岡・藤(2019)が製作したペン装置により測定し、その実用性を評価することであった。第2に、講義で扱う材料を視覚的に提示する方法として、実験1では資料の配布、実験2では板書とスライドの使用が、講義者の発話や板書の行動、および、これらの教授行動とノートテイキング行動の相互的な関係に及ぼす影響を探索的に調べることであった。研究計画 実験1、2とも群間比較デザインを用いた。場面 大学の中教室を使用した模擬の講義場面とした。参加者 実験1は大学生26名(男性10名、女性16名)、実験2は大学生24名(男性6名、女性18名)であった。独立変数の操作 実験1は配布資料の有無、実験2は板書とスライドの使用であった。行動の指標 ペン装置によって記録された筆記反応数、講義者の板書量、発話量、板書とノートテイキングの相互相関係数などであった。結果 実験1の1名を除き、ペン装置により講義中の多様な筆記反応を継続的に測定できた。実験1では、板書とノートテイキングに60秒以内の遅れで追従性がみられた参加者が18名いた。一方で、配布資料の有無による板書量やノートの筆記量の変化はみられなかった。実験2では講義者が板書やスライドを提示するペースの変化にノート筆記のそれが連動した。結論 ペン装置が講義場面のノートテイキング行動の測定に求められる実用性をもつことが示された。また、これまで明らかでなかった講義中の発話や板書、スライド使用という教授行動とノートテイキング行動の相互的な関係を相互相関係数や筆記の周波数の変化によって定量化することができた。

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© 2020 一般社団法人 日本行動分析学会
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