1995 年 8 巻 1 号 p. 4-11
当論文は、今回の特集号を編集するにあたって、行動分析と行動分析者が、ノーマライゼーションの原理や運動に対して、どのように貢献できるかについて確認したものである。これまで行動分析は、一般的には、障害分野において個人の行動を現実環境へ適応させたり、地域化というノーマライゼーションの大きな方針のもとで問題行動を減じる為などに用いられるテクニックとして捉えられてきた。しかし、三項随伴性に代表される行動に対する関係的な枠組みや、行動とそれに対する徹底的な正の強化の配置を尊重するスキナーの「倫理観」は、それ自体が単なるテクニックを越えた、哲学から方法論までを備えた、既成のノーマライゼーション原理に匹敵する体系として考える事ができる。この行動分析的ノーマライゼーションにおいては、"正の強化を受ける行動の選択肢の拡大"と運動の目標を表現することができる。そして、この目標達成に向けて、障害を持った個人に対して、従来の「教育・療育」のみでなく、適正な「援助・援護」行動や、環境設定の実験的分析としてのシミュレーションの方法が検討される必要がある。