2024 年 50 巻 3 号 p. 193-203
近年、情報通信技術を活用した遠隔心理支援が注目されているが、発達障害児や父子家庭を対象とした報告事例は少ない。そこで本研究は遠隔親子相互交流療法(Internet-delivered parent-child interaction therapy: I-PCIT)を父子家庭親子に適用した事例を報告し、その効果と有用性を考察した。対象は父子家庭の30代の父親と5歳の自閉スペクトラム症児であった。主訴として、A児の破壊的行動への困り感が挙げられた。ビデオ会議システムを使用したI-PCITをX年10月−X+1年5月までの約8か月間、週1回程度の頻度で実施した結果、父親の養育スキルが向上し、子どもの破壊的行動の減少および父親の育児ストレスの低下が示された。また父親の言語報告においてI-PCITの有用性が報告された。