生物教育
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研究論文
小・中学校教員養成課程の理科教育への植物検索実習の導入
大川 ち津る岡崎 恵視
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2001 年 41 巻 3-4 号 p. 100-114

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抄録

東京学芸大学の小・中学校教員養成課程の理科教育履修学生を対象にして1997~2000年の4月から12月に植物検索実習を行った.野外では植物観察,植物検索表による検索実習,実験室では植物検索カードとコンピュータプログラムを併用した実習を行った.また,あるクラスではホームページ(たまがわネット)の「植物図鑑」を活用した.そして,植物のスケッチ,形質調べ,種名調べ等の内容のレポートを宿題として課した.さらに発展的な実習として,種名既知の植物について形質を調べて,各自で植物検索教材としての一覧式検索表を作成させた.最後に植物検索実習全般に関するアンケート調査を行った.アンケートによると,「同じように見える植物でも違った特徴がたくさんあることを知った」というの感想が多かった.植物検索実習は,これまでに高校,中学校で実施してきたが(大川1989, 1999),今回の大学生の感想は,中学,高校生の感想とよく一致した.また,本実習を行うまでに自然観察の経験がなかった学生は全体(236名)の約20%で,この自然観察未経験者のほとんど(約90%)が「今回の実習をきっかけに自然に親しみたい」と答えた.さらに実習に参加した学生の90%近くが「教員になったらこういう植物検索をしたい」と答えた.以上の結果は,小・中学校教員養成課程の理科教育において,植物検索実習が学生の自然に対する関心を高め,環境教育,情報教育にも有効であることを示している.

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© 2001 一般社団法人 日本生物教育学会
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