2015 年 55 巻 3-4 号 p. 140-148
小学校理科では,見通しをもって観察,実験を行い,実感をともなった理解をはかることがうたわれている.また,理科B区分では生物の飼育・栽培の活動が奨励されている.小学校第5学年「植物の受粉・結実」の単元では,季節的,時間的な問題から児童が直接体験できる観察実験活動が少なく,実感を伴って理解することが困難である.そこで,植物教材であるファストフランツを用いて授業実践を行い,児童の受粉・結実に関する理解の向上ならびに植物に対する興味・関心をはかれるかどうか検討した.授業①では樞物の種子ができるためにはどのようなことが必要かを考えさせ,ファストフランツを用いて受粉処理を行わせ,その後の予想を行わせた.授業②では,受粉させた1週間後のめしべの様子の観察から受粉と結実との関係について確認させ,身のまわりの植物がどのようにして受粉や結実を行っているかについて理解させた.授業実践を行った結果,花のつくりや種子のでき方についての児童の正答率が向上した.また,種子ができる条件としで枯れると自然にできる”と考えていた児童が授業前に4割程度いたが,受粉処理の体験とその後の観察により,ほぼ全員が“花粉がめしべにつぐという正答になった.実際に植物に触れて体験的な活動を行ったことで,児童の植物に対する興味・関心が喚起されるなど,さまざまな効果が得られることがわかった.