生物教育
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研究報告
高等学校「生物基礎」教科書における用語と頁数について
―初版と改訂版の比較―
中道 貞子
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2017 年 59 巻 1 号 p. 19-25

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抄録

本研究では,現行の5社の高等学校「生物基礎」教科書―2011年または2012年検定済「生物基礎」見本本(初版)と2016年検定済「生物基礎」見本本(改訂版)―について,取り上げられている用語,および学習指導要領の各中項目や観察・実験および探究活動に割り当てられている頁数を調査・比較した.5社のいずれかの教科書で扱われている用語の総数は,初版の541から改訂版では527に減少した.しかし,5社が共通して扱っている用語は,改訂版では初版の1.5倍近くに増加した.また,それぞれの教科書に取り上げられている用語は,5社の改訂版全てで増加したが,初版での用語が少ない教科書ほど増加数が多かったため,改訂版での用語数は教科書間で差が小さくなった.さらに,太字で示されている用語は改訂後に増加する傾向があった.教科書の総頁数は,初版に比べて改訂版では教科書間の差が著しく小さくなり,各中項目に配当されている頁数の割合の差も小さくなった.「発展」や「参考」など,枠囲み記事として扱われている部分に関しても,改訂版では5社の頁数の割合の差が小さくなっていた.さらに,観察・実験および探究活動の数や配当頁数は改訂版では減る傾向が見られた.これまで,『初版に比べて改訂版では,各社の教科書の内容が似通ってくる』という声を聞くことがあったが,「生物基礎」の教科書で扱われている用語や各中項目の配当頁数などに関して,今回の調査でそのことが明らかになった.

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© 2017 一般社団法人 日本生物教育学会
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