2019 年 61 巻 1 号 p. 31-40
高校生物の教科書には,種子発芽のスキームが記述されているが,実験的に検証することは書かれていない.本研究では,イネ種子の発芽プロセスを調べる1セットの実験教材について報告する.この教材は,次のような6課題の実験から成り立っている:(1)発芽種子に出現するアミラーゼ活性の検出,(2)1 μMジベレリンで処理した無胚半切種子でのアミラーゼ活性,(3)40 μMウニコナゾール処理(ジベレリン生合成阻害剤)による発芽とアミラーゼ合成の阻害,(4)分離した糊粉層からのアミラーゼ活性の検出,(5)培養した糊粉層細胞から分泌したアミラーゼ活性の検出,(6)アブシシン酸による発芽とアミラーゼ合成の阻害.これら一連の実験を通して,発芽におけるジベレリン機能の役割,発芽に伴って検出されるアミラーゼの合成と反応する組織部位,ジベレリンとアブシシン酸の拮抗作用について,より深い理解が期待される.