生物教育
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研究報告
電気泳動法を用いたタンパク質に関する高等学校生物実験
―その実践2 組織特異的なタンパク質の検出―
本橋 晃
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2020 年 61 巻 2 号 p. 72-79

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抄録

分化した動物細胞に多量に含まれる組織特異的なタンパク質の検出を目的に,SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS-PAGE)を用いた実験教材を開発し,授業でそれらを実践した.電気泳動用試料は微量の材料にサンプル処理液を加えることにより調製した.材料の検討を行ったところ,ブタ,ニワトリ,マアジではいずれも筋肉中のミオシン重鎖,アクチンが,血液または骨髄中のヘモグロビンが検出できた.ブタ,マアジでは水晶体中のクリスタリンの分子群が検出できた.ブタでは血液を血しょうと血球に分けることにより,血しょう中に血清アルブミンが,血球中にヘモグロビンが存在することが確かめられた.材料としてはブタが適していると思われ,授業ではブタを材料に生徒に実験を行わせた.SDS-PAGEで用いるゲルは市販のプレキャストゲルを用いることにより,教師側の準備が非常に簡便になった.本実験を実施するにあたり,生徒が探究的に取り組めるよう組織中の各タンパク質の含有量,分子量などについては,できるだけ生徒自身に調べさせるようにした.実験結果から,生徒は容易に電気泳動像に見られる主要なバンドのタンパク質名を推定できた.またSDS-PAGEと筋肉および血液の顕微鏡観察とを組み合わせることにより,検出したタンパク質の組織中の存在場所について理解を深めることができたようである.

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© 2020 一般社団法人 日本生物教育学会
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