生物教育
Online ISSN : 2434-1916
Print ISSN : 0287-119X
研究論文
体験を通して学習できる教材開発
―循環器の学習における心臓モデルの活用―
齊藤 亮平内潟 雅仁寺前 洋生
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2022 年 63 巻 3 号 p. 130-138

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抄録

中学校第2学年の生命領域「動物の体のつくりと働き」で使用できる教材開発を行った.この分野は,ヒトの体内についての学習であり,直接観察することはできない.しかし,現行の教科書にはイカの解剖しか取り上げられておらず,ヒトと比較しながら学習することは難しい.そこで,生徒が実体験を伴った学習を可能にする教材として,弁のはたらきや血液循環の仕組みが体験できる「二心房二心室血液循環型心臓モデル」,動脈血と静脈血の違いをガス交換の観点から学習できる「二心房二心室ガス交換観察モデル」,二心房二心室の心臓と二心房一心室の心臓における血液の循環効率の違いを比較するための「二心房一心室血液循環型心臓モデル」の3つのモデルを開発した.本教材は容易に入手可能な安価な材料を用いて作製することができた.授業実践では,複数人が同時にモデルを操作することが可能であり,試行錯誤しながら探究的な学習が可能である.生徒は,実際に心臓モデルを操作することで,心臓の構造や動く仕組みについて具体的な見方ができるようになった.また,授業実践後のアンケートから心臓モデルを活用することは学習の手助けになると肯定的な回答をした生徒が全体の97%と大半の生徒がモデルの有効性を実感していた.本研究により,心臓モデルを活用することで,生徒は知識を受動的に与えられるのではなく,自ら発見し,体験することで効果的に学習することができることが示唆された.

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© 2022 一般社団法人 日本生物教育学会
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